こんにちは~!
お気軽着付け教室KIMONO-gokoroの椿留美子です。
祖母の着物がまた私の元に戻ってきました。
着物を着始めた頃、よく着ていてお気に入りの着物です。
しばらくお芝居の仕事が忙しくなって着物を着なくなり、実家に送り返していたんです。
前に「着物を送ってほしい」と母に頼んだ時に、特にどの着物とは指定しなかったんですが
その着物も入っていました。
私も忘れていたので、見た瞬間とてもうれしかったです。
ああ、また出会えた!!
この着物を見ると祖母を思い出します。
祖母はもう他界していますがいつでも思い出す。
人は寿命が平均80年くらいかな。長くても100年。
人間の寿命よりはるかに長い着物
3代続く着物
もっと長い寿命の着物もきっとありますよね。
この祖母の着物を始めて着たのは二十歳のころ。
京都のお寺に行き始めたので、とにかく着物が必要だった。
実家の母にかき集めて何枚か送ってもらいました。
その中にあったのがこの着物です。(ちょっとしわっとなっていますが笑)
この着物を着ていた当初は、着物のことなんて全然わからなかったし、
とにかくあるものを着る!
という感じでした。
お茶のお稽古で本当によく着ていましたが、先生はとても着物をほめてくださっていました。
このちょっとすすボケた(?変な言い方ですが)ような色合い、
たぶん年月が経って微妙な色合いになったのでしょう。
古典的な柄。
今ではお気に入りの大好きな着物です。
この着物を着るとき亡き祖母のことを思い出します。
夫(祖父)が戦地へ赴き、幼い2人の子供を抱えて(そのうち1人は母)
女手一つで育てあげた祖母。
再婚もすることなく、子供たちを見守り巣立たせました。
元気いっぱいに自転車でいつもいろんなところへ行っていました。
お祭りにはいつも色とりどりのバラ寿司(ちらし寿司 うちの田舎ではそういいます)を
作ってくれて待っていてくれました。
突然の訪問には「ちょっと待って」と言って自転車を飛ばし、何か美味しいものを買ってきてくれました。
晩年は、入院しても、こっそりウィスキーを飲んでいたとか。
病院を抜け出したこともあります。
見た目はおとなしい感じなのに、大胆だなあ~と今では笑い話になっています。
思い出と一緒に今私の手元にある着物。
そう考えると、着物ってすごいな、と思います。
「思い出の物品」とは違ってまだまだ現役で活躍できる。
機械仕掛けでもないので壊れない。
流行りすたりもない。
むしろ、価値が高まってくるような気がします。
帯や小物によって印象もいろいろ変わってアレンジできる。
そして何より、着ることでこの着物が生かされていると思うととっても嬉しい。
こんな時、着物が着られてよかったな、と思うのです。
例えば数日間だけ咲く桜の花と、3代続く(そしてこれからも続く)ことが出来るもの。
どちらも飽きることなく、美しいもの。
人間の寿命を尺度とするならば、短すぎて長すぎるもの。
だからこそ、私たちは憧れるのでしょうか。
私たちは
「長すぎる寿命の着物をもっと長くしてあげる」
ことが出来ますね。
家電、コンピューターは今や10年ももたない、もたないように作られているなんて聞きますが
寿命を延ばしてあげることはできない。
自分の気の持ち様で出来ることがあるものは嬉しいです。
タンスに眠っている着物を取り出して見てください。
思い出も詰まっていますか?
一つ一つにストーリーがあるかもしれません。
着付けはこの技術を手に入れると一生ものです。
自転車に乗れるのと同じように身体が覚えてくれます。
ぜひ、覚えてみてください。
そして、眠っている着物が光の当たる場に出られたらうれしいです。